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科学技術をよく考える -クリティカルシンキング練習帳-

コミュニケーションにおける慈善の原則
『簡単に言えば、思いやりの原理(principle of charity、慈悲の原理などとも訳される)とは、相手の発言や行動を解釈する際には、できるだけ筋が通ったものになるように解釈せよ、という原理である。』  他 1 件

この項では仕事でよく使うリストである、経営フレームワークの使い方について解説しています。やや「応用編」ですので、興味のない人は読み飛ばしてください。読み飛ばしても、その先を理解する上で支障はありません。


経営フレームワークとは、特定のテーマについて何を(どのように)考えるべきかをまとめたものです。第1部には含めませんでしたが、事業分析の「3C(市場−競合−自社)」、マーケティングミックスの「4P(製品−価格−プロモーション−流通)」、購買の「AIDMA(後述)」といったキーワードのリストになっているのが普通です(もちろんもっと複雑な表現形式のフレームワークもありますが、本書では扱いません)。

皆さんも仕事の中でこういったフレームワークをよく利用されると思います。しかし、コンサルティングや研修の現場で拝見していると、もう一歩踏み込んで考えるべきところを、フレームワークがあるがゆえに手前で止めてしまっているケースが少なくないと感じます。

たとえば「3C」。これは、あらためて考えてみるとかなり素朴なものです。3つのC以外にも、考慮に入れるべき要素はいろいろあるでしょう。政府(の規制)、(少数の強力な)サプライヤー・バイヤー、(法規制とは別に企業市民として考えるべき)自然環境などなど…。本来は皆さんの事業環境に応じてカスタマイズして考えるべきです。しかしつい「事業環境分析といえば3C」と発想してしまい、結果的に重要な要素を見逃してしまったりします。

これは必ずしもリスト項目の数を増やすべきということを意味しません。サプライヤーの動向は「競合」の枠の中で考えるということであればそれはそれで結構です。それぞれの枠の中には何が入るか、それらを足し合わせて、いま考えるべき要素が網羅できているかを一度考えてみようということなのです。

フレームワークの意図と意味を考え、状況に応じてカスタマイズして使う事例を、ケーススタディで見てみましょう。


田中さんはWebサイト運営企業に入社して3年目の若手。あるサービスへの無料ユーザー登録が頭打ちになってきており、打開策を考えています。

本で見かけたフレームワークを頼りにアクションプランを考え、上司である鈴木さんに相談を持ちかけました。


田中「鈴木さん、例の件で相談させてもらえますか?」

鈴木「もちろん。お、すでに素案があるんだね」

田中「ハイ!」

Attentionド派手な広告で【注意を促し】
Interestユーザーが【興味を持つ】ようなオリジナルグッズの
Desireプレゼントキャンペーンで【欲求を喚起】する。
Motive【動機づけ】のために期間限定として、
Action「今すぐクリック!」ボタンで【行動を起こさせる】。

鈴木「……これは?」

田中「あれ鈴木さん、アイドマご存じないんですか?ここ読んでみてくださいよ」

企業にとって、想定顧客が現在どの段階にいるかを知り、彼らをどのようなコミュニケーション方法によって購買に近づけていくかが重要だ。
 そのためには、潜在顧客に対して注意を促し(Attention)、興味を持たせ(Interest)、欲求を喚起し(Desire)、動機づけを行い(Motive)、行動を起こさせる(Action)ようなメッセージを伝えなければならない。
『MBAマネジメント・ブック』p74

鈴木「うーん、この文章がユーザーに何かを「させる」リストとして書かれているからちょっとまぎらわしいかもしれないな。田中君のシナリオはよいとしても、そのシナリオ通りにユーザーが行動してくれるとは限らないだろう?」

田中「それはそうですね…」

鈴木「例えば、その教科書のフレームワークをこう書き換えてみたらどうかな?」

  • (Attention)知っている
  • (Interest)興味を持っている
  • (Desire)欲しいと思っている
  • (Action)買う

田中「主語を【事業者】から【ユーザー】に書き換えたということでしょうか」

鈴木「そうとも言えるが、事業者がユーザーに取らせたい『行動』ではなくて、ユーザーの心理的な『状態』で書いたんだ。最後のA以外はね。
「田中君のプランでは、プレゼント欲しさにユーザー登録する人を集めてしまうことになる。これでは、登録してもサービスを使わなかったり、すぐに登録解除する人が続出してしまう。AIDMAを正しく使えていれば、サービスに興味をもっている人に登録してもらえるはずだろう?
「だから、まずはユーザーが登録するまでの気持ちの動きをしっかり理解しよう。打ち手の話はそれからだ」

田中「分かりました。ところで鈴木さん、Mを抜かしましたよ」

鈴木「フレームワークを使うときには、それぞれの要素の意味を考えてカスタマイズすることが大事なんだ。Mの意味をよく考えてみれば、今回はDの一部に含めていいだろう。今は細かく分析するよりスピーディにプランを立てたいからね。」

田中「では…、こうやって考えればいいでしょうか?」

状態行動
Attention知らない人を【知っている】状態にするには?
Interest知っているだけの人に【興味を持って】もらうには?
Desire興味がある人に【欲しいと思って】もらうためには?
Action欲しい人に、実際に【行動を起こさせる】には?

鈴木「お、さすが理解が早いね。では実際のアクションプランに向けて、もう少し具体的にしよう。例えば、【興味を持って】いるのに【欲しいと思って】くれないのはどうしてだろうか?」

田中「…ウチ以外のサービスにも興味があるから?」

鈴木「いい仮説だね。では仮にそうだとしたら、どうすればいい?」

田中「競合との比較記事を載せて、違いをアピールするとか?」

鈴木「そう、それは一つのアクションだね。そんな感じで、ユーザーの状態別に打てるアクションを洗い出すことはできないかな」

田中が書き直してきたのは、下のようなシートであった

状態左の状態のユーザーがなぜ一段下の状態に移らない(行動しない)のか?移らない理由を解消するには?
サイトの存在を知らないサイト外への広告出稿・検索エンジン対策
Attention
サイトの存在を知っている
Interest
サービスに興味がある
ウチ以外のサービスにも興味がある比較記事で優位性をアピール
Desire
サービスに登録したいと思っている
今でなくてもいいやと思っている期間限定のプレゼント
Action
(サービスに登録する)

田中「AIDAと、状態−次の状態に移らない理由−その理由を解消するアクション、という枠組みを組み合わせてみました。これを埋めていけば、どんな状態のユーザーにどんなアクションを打っていけばいいかが洗い出せますね」

鈴木「だいぶフレームワークの使い方が飲み込めてきたようだね。」

※上記は説明のための架空のケースです。実務においては、まずA-I-Dのうちどの段階のユーザーが多いのか、それどうやって測るのかを考えるところから始まるでしょう。


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最終更新: 2014-05-15 (木) 22:23:04 (JST) by bodpsy(bodpsy)

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