まえがき
『高齢に至ると思考が内面化し、社会関係から自由になり、自己概念が変容してそれまでの自己を超越するようになる人々がいる(略)。エリクソンの第9段階の危機を乗り越えた人々の得る「徳」も、トーンスタムの提唱するこの老年的超越だと言います。』
リスト
- ■宇宙の次元
- 【時間と子ども時代】時間の定義が変わる(例:現在と過去が同居する、子ども時代の思い出に新しい意味づけができる、過去の偉人と対話できる)。
- 【祖先とのつながり】世代の流れを意識する。前の世代と後に続く世代の両方に属している感覚が強くなる。
- 【生と死】個人の生死は世代の鎖の一部にすぎないという視点を獲得し、生に感謝しつつ死を喜んで迎えられる心境になる。
- 【生命の神秘】生命のすべては科学的に説明されるはずという知的制約を超越し、生命の神秘性という次元を受け入れる。
- 【喜び】盛大な行事からささやかな経験まで、物質という小宇宙の中に大宇宙を経験する喜びが現れる。
- ■自己
- 【自己との対決】自己の隠された面~良いものも悪いものも~を見つける。
- 【自己中心性の減少】自己中心的なものの見方が減る。
- 【肉体の超越】肉体美や美貌にこだわることなく肉体をいたわれる。
- 【自己の超越】利己主義から利他主義へと移行する。
- 【自我の統合】過去の出来事や叶わなかった夢などを含めて、これまでの人生を受け入れる新しいものの見方を獲得する。
- ■社会的・個人的関係
- 【関係の重要性と意味の変化】表面的な社交への関心が減り、つきあう人を選ぶ。孤独を好む。
- 【人生で演じる役割と折り合う】:自己と、演じてきた役割の違いを認識する。役割の必要性を理解しつつ、真の自己に近づくために役割を放棄しようとするときもある。
- 【無垢の解放】不必要な因習・規範・規則を超越する能力を身につける。抑制してきた自己表現の自由を解き放ち、無垢にふるまう。
- 【現代的な禁欲】身軽でいることが楽しくなる。生活に必要なもの以外は次の世代に譲る。
- 【日常的な知恵の超越】:正誤や善悪を決めつけず、その両方を受け入れる寛容さを獲得する。
あとがき
まえがきは、佐藤 眞一ほか『老いのこころ — 加齢と成熟の発達心理学』からの引用です。リスト項目は文献(1)からの要約・引用です(一部意訳があるかもしれません)。日本語に訳すにあたって文献(2)を参考にしました。
- タイトル: 老いのこころ — 加齢と成熟の発達心理学 (有斐閣アルマ)
- 著者: 佐藤 眞一(著)、髙山 緑(著)、増本 康平(著)
- 出版社: 有斐閣
- 出版日: 2014-06-13
この本からの他のリスト
(1) Tornstam, L. (2011). Maturing into gerotranscendence, Journal of Transpersonal Psychology, 43(2),166-180.
(2) 中嶌, 康之; 小田, 利勝 (2001). サクセスフル・エイジングのもう一つの観点-ジェロトランセンデンス理論の考察-, 神戸大学発達科学部研究紀要, 8(2), 255-269.