まえがき
『Baltesは、知恵とは“重大かつ人生の根本に影響を与えるような実践場面における熟達した知識”であると定義した。また「知恵がある(と感じられる)」反応には以下に示す5つの知恵に関わる知識が必要であることを仮定した。』
リスト
- 【宣言的知識】人生の問題に対して幅広くかつ深い知識がある
- 【手続き的知識】人生上の問題を解決するために必要な情報の検索、状況分析、意思決定、評価決定に関わる知識がある
- 【文脈理解】人生上の問題の背後にある年齢的・社会歴史的・生活史的文脈を理解している
- 【価値相対性の理解】人生上の問題を解決するとき、どのような価値観や目標をもつかで方向性が変わることを理解している
- 【不確実性の理解】人生は予測不可能なものであり、不確実性を完璧に排除することはできないことを理解している
あとがき
まえがきを含めて、髙山 緑ほか『知恵の測定法の日本語版に関する信頼性と妥当性の検討』(1)より。まえがきは本文を一部編集のうえ引用しました。リスト項目は、記号を加減して装飾したほかはそのままの引用です。
タイトルのBerlin Wisdom Projectは、まえがきに名前のあるPaul Baltesがマックス・プランク研究所(Human Development)にて実施している知恵の研究プロジェクト。
Baltesらの論文(2)によれば、最初の2項目は基本的な基準、続く3項目はメタ基準となっています。
佐藤 眞一ほか『老いのこころ — 加齢と成熟の発達心理学』に、この5つの定義を見つけました。この本の「引用・参考文献」からたどれる文献に目を通したうえで、わかりやすそうな日本語になっている論文からリストにまとめました。
(1) 高山緑・下仲順子・中里克治・権藤恭之 (2000) 「知恵の測定法の日本語版に関する信頼性と妥当性の検討 ―― Baltesの人生計画課題と人生回顧課題を用いて」 『性格心理学研究』 9, 22-35.
(2) Baltes, P. B. & Staudinger, U. M. (2000) Wisdom: A metaheuristic (pragmatic) to orchestrate mind and virtue toward excellence. American Psychologist, 55, 122-136.
- タイトル: 老いのこころ — 加齢と成熟の発達心理学 (有斐閣アルマ)
- 著者: 佐藤 眞一(著)、髙山 緑(著)、増本 康平(著)
- 出版社: 有斐閣
- 出版日: 2014-06-13