まえがき
『〈臨床の知〉は、科学の知の三つの構成原理を先のように端的に、(1)普遍主義、(2)論理主義、(3)客観主義と呼ぶとき、そのそれぞれに対して、(1)コスモロジー、(2)シンボリズム、(3)パフォーマンスとわたしが呼ぶものを構成原理としている。』
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- コスモロジー(固有世界): 場所や空間を――普遍主義の場合のように――無性格で均質的な拡がりとしてではなくて、一つ一つが有機的な秩序をもち、意味をもった了解とみなす立場。個々の場合や場所(トポス)が重要になる。
- シンボリズム(事物の多義性): 抽象記号にではなくことばによるように、物事をそのもつさまざまな側面から、一義的にではなく、多義的に捉え、表す立場。
- パフォーマンス(身体性をそなえた行為): 行為する当人と、それを見る相手や、そこに立ち会う相手との間に相互作用、インタラクションが成立しているとする立場。
あとがき
まえがきを含めて、中村 雄二郎 『臨床の知とは何か』((岩波書店、1992年)より。
科学の知(「近代科学の性質」を参照)と臨床の知は次のように対比されています。
科学の知は、抽象的な普遍性によって、分析的に因果律に従う現実にかかわり、それを操作的に対象化するが、それに対して、臨床の知は、個々の場合や場所を重視して深層の現実にかかわり、世界や他者がわれわれに示す隠された意味を相互行為のうちに読み取り、捉える働きをする