まえがき
『近代科学がこれほどまでに人々に信頼され、説得力をもったのは、なにゆえであろうか。古今の数ある理論や学問のなかで特別の位置を占めたのは、なにゆえであろうか。それは、(略)自分の説を論証して他人を説得するのにきわめて好都合な三つの性質をあわせて手に入れ、保持してきたからにほかならない。』
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- 普遍性: 理論の適用範囲がこの上なく広い。例外なしにいつ、どこにでも妥当する。
- 論理性: 主張するところがきわめて明快に首尾一貫している。
- 客観性: 或ることが誰でも認めざるをえない明白な事実としてそこに存在している。
あとがき
まえがきを含めて、中村 雄二郎 『臨床の知とは何か』(岩波書店、1992年)序文より。
普遍的で論理的で客観的。けっこうじゃないかと感じますが、著者はここから次のような魅力的な問いを立てて「臨床の知」を論じていきます。
このような原理をそなえた理論によって具体的な現実は捉えられているだろうか。否であろう。むしろ、近代科学によって捉えられた現実とは、基本的には機械論的、力学的に選び取られ、整えられたものにすぎないのではなかろうか。