【再定義】テーマを貫く「思想」を見い出す

最初の【定義】のステップでは、テーマを自分なりに定義しました。しかし、ここまでの長い道のりの間に、いろいろなことを思い出したり発見したりしているはずです。またそのために本来言いたかったことがぼやけている可能性もあります。そこで、最後にもう一度リストを見渡して、最終調整をかけようというのがこの【再定義】のステップです。

内田さんが作った「セールス4か条」を見てみましょう。

セールス4か条

  • 【準備】業界・業種・規模は無視し、ニーズから発想せよ。
  • 【訪問】会社窓口として商談に臨めるよう、訪問履歴を確認し、社内体制を作っておく。
  • 【商談】商談の潮目は、わずかな口調の変化からも読み取れる!
  • 【フォロー】早く、こまめに(うるさがられては逆効果)。

ここから、以下の2つのステップを踏んでリストを再定義します。

1. 【定義】のステップで作成したメモを読み返す

まず、【定義】のステップで作成したメモを読み返してみましょう。以下の点に注意してみてください。

  • テーマについて考えていたことが盛り込めたかどうか
  • 「これはテーマではない」と定義したことがまぎれ込んでいないかどうか

必ずしも、【定義】メモが正しいということではありません。リストを作成していくうちに、書きたいことが徐々に変わっていくことはあります。ただその場合は、おそらくリストのタイトルをよりふさわしいものに変えたくなると思います。

2. リスト項目を見て、改めてタイトルを付け直す

ステップ1の結果がどうであれ、リスト項目を見渡して、改めてタイトルを付け直してみます。つまり、最終化したリストに対して、さらに【要約】【凝縮】【修辞】のすべてをスキルをつかって、短い一言を考えてみようということです。

内田さんはリストを眺めわたしてみて、改めて顧客への気配りの重要性に気が付きました。商談の最中はもちろん、その前から、何が必要になるかを考え抜いてよく準備ができた案件については、獲得率も高いと信じるに至りました。

【要約】すれば、

  • 気配りのセールス4か条

です。ただ、これでは陳腐ですし、言いたいことが盛り込めた感じがしません。そこで【凝縮】のテクニックを参考に、言い換えを試みました。自分が具体的にどのように顧客と接しているかを振り返って、

  • 「五感をフル活用する」セールス4か条

という言葉を思いつきました。

仕上げに【修辞】を施して完成させた。内田さんのリストをご覧ください。

「五感をフル稼働せよ!」内田流セールス4か条

  • 【準備】業界・業種・規模は無視し、ニーズから発想せよ。
  • 【訪問】会社窓口として商談に臨めるよう、訪問履歴を確認し、社内体制を作っておく。
  • 【商談】商談の潮目は、わずかな口調の変化からも読み取れる!
  • 【フォロー】早く、こまめに(うるさがられては逆効果)。

事例:ケネディ大統領の意思決定

「テーマを貫く思想」を見い出す実例をお目にかけます。これはわたしが企業向けの研修で使っている演習の一部です。

【設問】 米国ジョン・F・ケネディ大統領政権は、関係者が自分の利害を強く主張し合っていた意思決定プロセスを、以下1〜5のように改めた。これを「○○型意思決定プロセス」と命名するとすれば、○○にはどんな名前がふさわしいか。

  1. 議論の参加者には、所属部門の利害を離れて「疑問を持った一般人」になることを要求した
  2. 不十分な論点や未検証の前提事項を暴露する、中立な「御意見番」を任命した
  3. 参加者には地位の上下関係を忘れさせ、議事進行も自由とした
  4. 参加者を小グループに分け、幅広い選択肢を生み出しやすくした
  5. 大統領は初期の議論には参加せず、参加者の意見に影響を与えないよう努めた

意思決定の技術』(ダイヤモンド社 2006)より編集・引用

この5つの文章からいきなり「○○型意思決定プロセス」と命名するのは難しいことです。そこで研修では、まず上記をを2ないし3のグループにまとめ、要約文を考えてもらいます。

その後で命名してもらいます。このとき、従来の意思決定プロセスを「主張型意思決定プロセス」と呼んでいることも伝えます。

この演習はキャッチフレーズやキャッチコピーを思いつくトレーニングに近いものがあります。直感で答えるしかない問題に見えますが、以下の作業を順番にやっていけば、コピーライターでなくとも何らかの言葉はひねり出せるはずです。

  • リストからテーマを貫く思想を感じ取り、
  • 【要約】【凝縮】【修辞】のステップで圧縮する

よかったら、先に進む前に少し時間を取って考えてみてください。

いかがでしたか?解答例は「探究型意思決定プロセス」です。これは本に挙げられていた言葉をそのまま引用しました。特定の立場から主張するのではなく、最善解をあくまで探し続けようという意味合いがよく出ています。

この演習問題は難しく感じたとしても、自分が作ってきたリストが対象であれば、適切な言葉を見つけやすいはずです。