まえがき
『1930年代から米国の規制ツールボックスの一部として、費用便益分析は(略)標準的な方法が確立されていて、明確に定められた手順に従うことになっている。』
リスト
- 考慮すべき規制を特定する(規制しない/何もしないを含む)
- 誰に当事者適格があるかを決定する(誰の費用と便益を考慮する必要があるか)
- 測定指標を選択し、費用と便益の目録を作成する
- 長期的な費用と便益を数値的に予測する
- すべての費用と便益に金銭的価値を割り当てて、すべての影響を金銭換算する
- 時間的経過を考慮して費用と便益を割り引き、各費用と便益の現在の価値を取得する
- ステップ6の項目を合計することで、考え得るそれぞれの規制の純粋な現在の価値を計算する
- 感度解析を行う
- 推奨を行う
あとがき
まえがきを含めて、ハワード・スティーヴン・フリードマン 『命に〈価格〉をつけられるのか』 (慶應義塾大学出版会、2021年)より。引用元はアンソニー・E. ボードマン 『費用・便益分析: 公共プロジェクトの評価手法の理論と実践』とのこと。
ステップは体系的ですが、規制の対象として誰を当事者にするか、どの指標を選択するか、その指標に関連付けられる費用と便益をどう見積もるか(そのなかで、本書のテーマである「命の価格」も見積もられます)など、仮定の置きどころがたくさんあり、それにによって分析の結果が大きく変わります。
また影響が国境を超えるような事象に対しては一国家が課せる規制には限界があります。
とはいえ、そういった仮定を明示できる点、分析のステップは透明なので第三者も検証できる点などはメリットで、実際にはさまざまな工夫を施して使われている様子が本書では描かれています。
なお、タイトルの「社会的費用便益分析」という言葉は、政府の規制機関による費用便益分析という意味合い。企業が行うそれは「私的費用便益分析」です。
- タイトル: 命に〈価格〉をつけられるのか
- 著者: ハワード・スティーヴン・フリードマン、南沢 篤花(翻訳)
- 出版社: 慶應義塾大学出版会
- 出版日: 2021-04-17
- タイトル: 費用・便益分析―公共プロジェクトの評価手法の理論と実践
- 著者: ボードマン,アンソニー・E.(著)、ヴァイニング,アイダン・R.(著)、ワイマー,デヴィッド・L.(著)、グリーンバーグ,デヴィッド・H.(著)、Boadman,Anthony E.(原著)、Weimer,David L.(原著)、Vining,Aidan R.(原著)、Greenberg,David H.(原著)、光永, 岸本(翻訳)、亨, 出口(翻訳)、日出彦, 小滝(翻訳)、俊彦, 阿部(翻訳)
- 出版社: ピアソンエデュケーション
- 出版日: 2004-12-01