まえがき
『エルサッサーは生物と機械がこの点(注:共に自動調整装置とフィードバック機能があるという点)で一致することを確認した上で、生物にあって機械にないものは何かを追究した。彼が突きとめたのは、』
リスト
- 生物はコンピューターより自動調整もフィードバックも精度が高い
- 生物のほうが全体の運用に要するエネルギーがはるかに少なくて済む
- 生物には複雑な要素の結合した再生、すなわち増殖が可能であるのに、コンピューターにそれはできない
あとがき
まえがきを含めて、大嶋 仁『1日10分の哲学』 (新潮社、2024年)より。まえがきもリストも本文を編集しつつ引用しています。
本書ではエルサッサーというラストネームでのみ呼ばれ、次のように紹介されています。
このエルサッサー、もともとは原子核の構造を研究していたが、理論物理学の行く末を案じたあげく地球物理学に転じ、最後は生物学者になったという逸物である。彼を動かしつづけたのは、「科学は哲学でなくてはならない」という信念であった。その「哲学」が「科学」から消えたと彼は言う。「ヒロシマのキノコ雲の中に消えた」と。
興味深い人物ですが、和訳された著書はありません。本書には参考文献[1]が挙げられていました。
Wikipedia によるとウォルター・エルサッサーは「ダイナモ理論の父」と呼ばれているそうですが、著者は、リスト化した部分が示すように、サイバネティックスの父ノーバート・ウィーナーとの関心の共通点を指摘しています。まえがきで引いた段落の直前も引用しておきます。
サイバネティックスとは、機械と生物に共通するシステムのことである。これが機能するには、自動調整装置とフィードバック機能が必要であることをウィーナーは明らかにした。
参考文献
[1] Walter Elsasser: Memoirs of a Physicist in the Atomic Age, Science History Publications, 1978.
表記ゆれ対応
#サイバネティクス