【列挙】リスト項目を思いつくかぎり挙げてみる

まずは、とにかく挙げてみる

テーマについてギュッと考え詰めたところで、リストに含めたい事柄を思いつくかぎり挙げてみましょう。

内田さんが過去の体験を思い返してリストアップしてくれたコツは、こんな感じです。

「セールスのコツ」

  • 10分前には必ず到着
  • 最初に(時間を取ってくれた)お礼を言うべし
  • 持ち時間を確認せよ
  • 顧客の言葉を遮るべからず
  • 最後は熱意で押し通せ
  • …(以下省略)…

「とにかくたくさん挙げる」というとブレインストーミングが定番です。しかし自分のリストを作るために人を集めるわけにもいきません。そういうときには「壁打ち」が有効です。

これは博報堂生活総合研究所の吉川 昌孝さんに教わった言葉で、要するに「ただ聞いてもらう」ということ。誰かに時間を取ってもらい、

「いまこんなこと考えているんだけど…」

と言いながら説明を試みます。すると不思議なもので、分かってもらおうと説明する行為によって新しいアイディアが生まれたり、考えがまとまったりします。聞き手がそのテーマに詳しいかどうかは関係ありません。どちらかというと詳しくない方が好ましいでしょう。あまり詳しいと、聞き手の意見に引きずられてしまうこともありますので。

内田さんが10年間の経験を振り返れば、50や100はリストアップできるかもしれません。リストしたいことを書き出していって、それで十分タイトルに見合った網羅性があると感じたら、それはそれなりに役に立つリストになるでしょう。

「ただ挙げる」やり方の限界

ただし、「100個のコツ」のリストには二つ問題があります。

一つは、応用が利かないこと。コツを100個書き出して部下にマネをさせれば内田さんのように振る舞えるのかといえば、決してそうではないでしょう。 これは、「100個のコツ」があくまでも個別の事例の寄せ集めであり、原則が見えないことによります。内田さん自身も気が付いていないかもしれませんが、内田さんの仕事がうまく行っているのは、コツを100個知っているからではなく、よいセールスパーソンとしての原則を持っているからです。 100個のコツを「わがセールス10か条」まで絞り込んでいくことで、単なる「べし・べからず集」を「原則」に昇華させることができるのです。

もう一つは、内容に偏りがある可能性があること。例えば内田さんが上で挙げた「セールスのコツ」であれば、「セールストークのコツ」と言い換えた方が適切です。内田さんが10年の経験をまとめたいと思う対象が「セールストーク」ならばこれでよいでしょうが、あくまで「セールスのコツ」だとしたら、たとえ項目が100個あったとしても、リストとしては貧弱に感じることでしょう。つまりタイトルと中身が合っていないのです。

今ひとつ完成度が低いなと感じるリストは、往々にして上記の二つ、いってみればメッセージの「深さ」と「幅」が十分でないリストです。第一部でご紹介したリストの中で気に入ったものを読み返してみてください。タイトルに対して十分な「深さ」と「幅」を備えていることと思います。その両者が揃ってはじめて、「コピーして手帳に貼り付けたくなるリスト」になるのです。

そこで、リストのテーマに合った項目を洗い出すために有効な考え方として、次の【分析】のステップでは「フレームワーク思考」をご紹介します。この成果はその次の【構成】のステップでも活用できます。リストアップし尽くせたという人も、ぜひ試してみてください。