【意志決定】困難な選択を乗り越える

仕事や生活において、単純に正誤では決められない選択があります。たとえば、チームとしての利益目標を達成するために、部下の一人にかなりの負荷を強いなければならない。あるいは、進めば強引だと非難され、退けば弱腰だと馬鹿にされる。

そのような困難な意志決定に際してどうふるまうべきでしょうか。わたしは、(1)時機を逃さない、かつ(2)振り返って後悔しない(小さい)意志決定を「よい意志決定」と定義して、決め方の教材や研修などを開発してきました。

こう考えれば間違いない意志決定ができる、という画一的な方法論はありません。しかし「リスト化の力」を活かすことで、よい意志決定が可能になります。本書では、2つのアプローチをご紹介します。

意志決定の物差しとしての、「ありたい自分」リスト

自分はこうありたいという「ありたい自分」をリストにします。例えばこんな感じ。

ありたい自分の例:「誠実な人」の行動

  1. やると言ったことはやる
  2. 自分の欲求は後回しにする
  3. 勇敢に振る舞う
  4. 公共の利益を重んじる
  5. 敬意・正直さ・信頼・公正さを決して失わない(「リストが自分のものになるまで」より再掲)

この「ありたい自分」を物差しとして、自分の意志決定を評価します。具体的には、以下のように問いかけてみるということです。この方法は、個人的な意志決定に特に役に立ちます。

意志決定のための、「ありたい自分」への問いかけ

「ありたい自分」リストづくりには、時間がかかります。下にコツを書いておきますので、時間をかけて育てていきましょう。

「ありたい自分」リストを育てるコツ

多面的な「問い」のリストを用意する

「ありたい自分」リストは、まず意志決定の物差しを考えようというアプローチでした。ただし、皆さんがマネジャーあるいは親として下す意志決定の中には、シンプルな物差しを持ちづらいものもあります。そういったときには、多面的な「問い」のリストを用意して、自分に考えさせるのが有効なやり方です。

戦略的な意思決定では、範囲、複雑さ、重要さがどうであっても、初めから答えを得ようとしてはならない。重要なことは、正しい答えを見つけることではない。正しい問いを見つけることである。

ピーター・F・ドラッカー 『現代の経営

マネジャーにとって価値があるのは、行動の規範となる指針であろう。すなわち、マネジャーが困難に直面したまさにそのときに、問題を正面から見据え、その本質を明らかにする指針である。私は数百人という数のマネジャーから、個人的な責任と職業上の責任にかかわる難しい意思決定についての話を聞いた経験から、最も有益な指針は、回答を与えることではなく、「問い」を投げかけることだと、いまでは確信するようになった。

ジョセフ・L・バダラッコ 『「決定的瞬間」の思考法

第1部で紹介した「大きな決断をするための、5つの問い」や、後述する「人生の方向性を考える、9つのグレート・クエスチョン」のような問いかけのリストが好例でしょう。

こういった問いのリストも、「ありたい自分」リスト同様にメンテナンスをしていきましょう。問いのリストがあれば、考えるべきポイントが明らかになります。しっかり悩むことができます。それが、よい意志決定につながります。