リストが自分のものになるまで

多くのリストは、特にチェックリスト系のリストは、使うのは難しくありません。それを考えるとき・するときに意識してみればよいだけです。例えば「SCAMPER ― 発想を練り上げる合い言葉」などは、自分のものにするのが容易なリストといえるでしょう(その結果よい発想が出るかどうかは、使う人次第ですけどね)。

一方、自分のものにするのが難しいリストもあります。たとえばあるべき「心得」を説くようなリストです。一つ例を挙げましょう。

「誠実な人」の行動

(”The Book of Hard Choices: How to Make the Right Decisions at Work and Keep Your Self-Respect“より翻訳・引用)

これはわたしのお気に入りのリストの一つですが、この『「誠実な人」の行動』が、文字通りの意味で「自分のものになる」ことはない。そう思います。どんなにがんばってもこんな立派な人にはなれそうにありません。

「行動の指針として使えるようになる」という意味であれば、自分のものにできるかもしれません。しかしこちらの意味においても、実現はなかなか遠い。以下に、その状態に至るまでの典型的な道のりを書いてみたいと思います。

気に入ったところだけつまみ食いする

そもそもあるリストが気に入るということは、すべての項目ではないにせよ、どこか共感している部分があるから。最初は、その部分だけに目が行く。

「誠実とは『やると言ったことはやる』ことか、いいこと言うな。自分もまさにそう思っていたよ」

作成者の意図や、言葉の意味の深さに気が付く

自分なりの理解で「誠実」に過ごそうと思うと、リスト項目どうしが矛盾する場合がでてくる。たとえば「やると言ったことはやる」を貫きたいのに、同時に「自分の欲求は後回しに」しなくてはならない事態に遭遇して、何らかの気づきを得る。

「自分がやりたいことだけを選んで『やると言ったことはやる』というのは、誠実ではなくてワガママというのかもしれない」

ますます気に入って、すべての項目を満たそうとする

リストの項目一つひとつに意味があることに気がついたので、リストの言葉をできるだけ忠実に守ろうとする。

「よし、当分このリストを手帳に挟んで、困ったときに使ってみよう」

たくさんの例外を発見する。「自分には向いていない」「使えない」と思う

とはいえ、現実の世界で適用とすると、やはり難しいケースが生じる。

「部下が望まない仕事を【誠実に】押しつけるなんてできっこない」
「【誠実に】価格交渉をしていたら、競合に勝てるわけがない」

ここでリストを捨てる人もいます。しかし、それが言い訳に過ぎないような気がして、なんとか使い続けてみようとする人もいます。

もう一度言葉の意味を吟味する。自分なりに言い換える

抽象的な言葉に、自分なりの解釈を盛り込んでみる。必要に応じて言い換えてみる。

「そうか、『やると言ったことはやる』といっても、自分で決めた目標をやり遂げるというだけの意味ではないな。人の信頼を裏切らないという意味合いが強いんだ。すると、『他人と約束したことは、やりとげる』と書き換えた方がいいかな?」

「第三の解」を見出す経験をする

リストをにらんで考え抜くことで、リストのテーマ(この場合「誠実さ」)に沿いながら何とかやり遂げる道を見いだす。その結果に自分でも高い満足を得る。

「最高の結果とは言えないけれど、ふり返ってみれば【誠実さ】を失わない選択ができたかもしれない」

達成できていないことを認めつつ、リストを頼りにする

「何も考えなくても誠実に振る舞える」といった、悟りを開いたような状態は半永久的に来ないことに気づく。
誠実であり続けるためには、そのつど考え尽くさなければならないことを覚悟する。リストをその指針として使うようになる。

(「真のエキスパートに至る9つのステージ」風にまとめてみました)

本節の見出しをあらためてリスト化しておきます。

リストが自分のものになるまでの7ステップ