【読書】「見出し」を膨らませて「リスト」にする

本の見出しは必ずしもよいリストではありません。本文の内容を含めたリストに言い換えて読書メモにしておきましょう。

見出しは必ずしもよいリストではない

いいなと感じた本の目次や見出しを抜き書きしたとたん、迫力がなくなってしまった。あるいは、しばらくして読み返したら意味が分からなくなってしまった。そんな経験をお持ちではないでしょうか。

これは、本の目次や見出しが、本書でいうリストとは違うからです。目次や見出しの第一の目的は、読み手の興味をかき立てること。必ずしも内容の要約である必要はないのです。

なかには、見出しが要約になるよう注意深く工夫している本もあります。例えばビジネス書、とりわけアカデミックな本は、構成も見出しも論理的で、目次を読んでいけば本の要約が分かるようになっています。

ただ、それはそういう種類の本もあるというだけの話。言葉が抽象的だからといって、その見出しが悪いわけではありません。

そういうときは、本文の内容を見出しに反映して、自分なりにリスト化してみましょう。

事例:「上手に批判する秘訣」

EQ―こころの知能指数』という本の第十章「職場の秘訣」に、「上手に批判する秘訣」という文章があります。この文章の小見出しだけを拾ってみると、こうなります。

上手に批判する秘訣

  • 具体的に言うこと
  • 解決策を示すこと
  • 直接伝えること
  • 気持ちを察すること

これだけを見ると、実に当たり前っぽいですね(繰り返しになりますが、見出しがよいリストでないからといって、著者や編集者が注意不足だということではありません)。

例として「具体的に言うこと」の部分をまるごと引用します。内容をリスト項目に変換してみましょう。【要約】【凝縮】【修辞】のスキルが役に立ちます。

具体的に言うこと

精神分析医から企業コンサルタントに転じたハリー・レヴィンソンは、上手に批判する秘訣(実際には上手に褒める秘訣と不可分一体)を次のようにアドバイスしている。

具体的に言うこと 問題がはっきり表れている部分をとらえて批判すること。改善を要する問題点がよく見えるケース、あるいは特定部分に関する処理能力の欠如がパターンとして表れている場面など。「何か」良くないと言われるだけでどこをどう変えればいいのかわからない状態では、士気が低下する。具体的にどこが良くて、どこが悪くて、どうすれば改善できるかを指示することが大切だ。遠まわしな言い方や間接的な表現はよくない。伝えるべき要点がぼけてしまう。夫婦のあいだで苦情を言うときの「XYZ」と同じだ。何が問題なのか、何が悪くて自分がどういう気持ちにさせられたか、どう改善してほしいか、相手にはっきりと伝えることが大切だ。

「具体的に、というのは批判する場合だけでなく褒める場合にも大切なポイントです。漠然とした褒め言葉でも効果がないとは言いませんが、大きな効果はありません。それに、そこから何か学ぶこともできません」と、レヴィンソンは指摘している。

「具体的に言うこと」とは、「何を」「どのように」言うことなのでしょうか。

まず、「何を」言うか。第一に、もちろん「問題」です。ここでは「問題がはっきり表れている部分」というあたりを汲んで、「問題点」という言葉を選びます。これによって、「曖昧な問題でなくピンポイントで特定された問題」というニュアンスを自分に与えることができます。自分の読書メモですから、主観的にピンと来る言葉を積極的に使っていきましょう。

第二に、「どこをどう変えればいいのか」「どうすれば改善できるか」「どう改善してほしいか」など、改善の方向性についても言うことが要求されています。そこで改善の方向性が示す目的地である「望ましい姿」も加えます。

「何を」=「問題点と望ましい姿を」と要約できたので、次は「どのように」言うかを考えます。もちろん「具体的に」なのですが、同時に「遠まわしな言い方や間接的な表現はよくない」という文もあります。具体的なのはよいが、くどくどと言ってはいけないということですね。そこで「ストレートに」という言葉も付けておきます。

まとめてみるとこうなります。

  • 問題点と望ましい姿を、具体的かつストレートに伝える

その他の3つの見出しについても内容をリスト項目に反映してみました。

上手に批判する秘訣

リスト化するためには文章を読み込んで内容をよく理解する必要があります。内容をよく理解してしまうと、見出しだけを並べたリスト上手に批判する秘訣

  • 具体的に言うこと
  • 解決策を示すこと
  • 直接伝えること
  • 気持ちを察すること

を見ても、内容が引き出せるようになっているかもしれません。しかし時間が経てば記憶も薄れてしまいます。頭がホットなうちに、できるだけ具体的な文言を盛り込んでおきましょう。