まえがき
「研修評価・効果測定に関して、米国にはスタンダードな考え方がある。それは、カーク・パトリック(Donald L. Kirkpatrick)の4段階評価と呼ばれるもので、米国では約7割近くの企業が採用し、日本でもかなり普及しているモデルである。」
リスト
- Reaction(研修満足度):受講直後のアンケート調査等による受講者の研修に対する満足度の評価
- Learning(学習到達度):筆記試験やレポート等による受講者の学習到達度の評価
- Behavior(行動変容度):受講者自身へのインタビューや他者評価による行動変容の評価
- Results(成果達成度):研修受講による受講者や職場の業績向上度合いの評価
あとがき
能力開発研究センター 高度職業訓練研究室 『公共能力開発施設の行う訓練効果測定-訓練効果測定に関する調査・研究-』(平成16年度)第6章より。
英語の文献では、Wikipediaの Donald Kirkpatrick からたどった “Kirkpatrick’s Four Levels of Evaluation“(米国のサンディエゴ州立大学のサイト)が詳しそうです(このサイトでは第3レベルが”Transfer”になっています)。
うーん、この4つがピラミッドのように層をなすというのは、素朴すぎるモデルに思えます。
例えば、引用元文書のような職業訓練という文脈では、レベル1と2をすっ飛ばして、とにかく3(行動変容)を促すことで4(結果)を引き出すような研修もありますね。理屈はいいから営業の作法を教える。その通りやってみる(3)と結果が出る(4)。そこで初めて、何を学んだかに気づき(2)、辛かった研修の満足度が上がる(1)。
あるいは、注意深く設計されたリーダーシップ研修の中には、行動変容(3)を促すために研修の満足度(1)を犠牲にする研修があります。講師が反面教師になったり、研修が失敗に終わったりすることで、参加者が不満や危機感を持ち、自発的な行動を起こしてくれることを期待するような研修です。この場合、参加者が研修の本当の意図に気づいて満足する(4)のはかなり先か、あるいはずっと気づかない可能性があります。
また4.の結果というのも、かけた測定コストに見合う意味のあるデータが取れたという事例を寡聞にして知りません。ビジネスの結果にはあまりに多くの因子が影響を及ぼしており、個別の研修の影響を推定することは事実上できないのではないでしょうか
その意味で、ラーンウェル関根さんによるカークパトリック氏本人のプレゼンを聞いてのコメント『「レベル3」の「行動変容→習慣化」を支援することに力を入れたほうがよいのでは?』に共感します。