まえがき
『(コロンビア・カレッジ・シカゴの教授であるアン・)リベラのコメディー理論は、ユーモアのグレーゾーンの微妙な色合いを理解するのに役立つ。彼女の理論では、コメディーには(略)3つの重要な要素がある。国の三権分立制のように、この3つがバランスを保つことで機能するのだ。』
リスト
- 認識 (recognition): 認識はコメディーの核心だ。コメディアンが観客を笑わせる最も簡単な方法の一つは、馴染みのあるものを描写することだ。
- 痛み (pain): コメディアンは痛みを使ってジョークを作る。痛みには身体的なものも精神的なものもある。痛みのなかにユーモアを見いだすことはカタルシスをもたらす場合もあるが、思い出したくもない感情がよみがえってしまう場合もある。
- 距離 (distance): ユーモアの話題と相手との距離。距離には時間的なもの(笑い飛ばすには早すぎる)、地理的なもの(身近な人の身に起こったことか、地球の反対側の誰かの身に起こったことか)、心理的なもの(個人の経験にどれくらい関連があるか)がある。
あとがき
まえがきを含めて、ジェニファー・アーカー、ナオミ・バグドナス『ユーモアは最強の武器である: スタンフォード大学ビジネススクール人気講義』 (東洋経済新報社、2022年)より。著者らはTEDにも登壇しています[1]。
リストは本書と参考文献[1]をまとめて作成しました。本書では第一項目の認識が「事実」と訳されていましたが、原著が引用している参考文献[2] では recognition であること、「事実についての当事者の認識」という意味合いであることから「認識」としました。
ユーモアが事実認識に基づいているというのは、言われてみればその通りなのですが、ちょっとハッとさせられました。たしかに、事実として認識していることがらについての話だからこそ、何らかの落差を語られたときに面白いと思えるわけですね。
その事実認識を話題にする際には、痛みと距離のバランスが必要。ユーモアの匙加減の難しさが感じられるリストです。
- タイトル: ユーモアは最強の武器である: スタンフォード大学ビジネススクール人気講義
- 著者: ジェニファー・アーカー(著)、ナオミ・バグドナス(著)、神崎 朗子(翻訳)
- 出版社: 東洋経済新報社
- 出版日: 2022-09-09
この本からの他のリスト
参考文献
[1] Jennifer Aaker and Naomi Bagdonas: “Why great leaders take humor seriously” | TED Talk
[2] Libera, Anne. “The science of comedy (Sort of).” AMA Journal of Ethics 22.7 (2020): 602-607.