まえがき
『スラッジが重要な目的を果たしているケースも多い。ときには不可久なこともある。』
リスト
- 社会給付の受給資格を確認し、制度の健全性を守る。
- 自制心がうまく働かないときの防御装置となる。
- プライバシーを守る。
- 安全を守る。
- 給付の対象を最も必要としている層あるいは最も優先度の高い層に絞る。
あとがき
まえがきを含めて、キャス・R・サンスティーン『スラッジ: 不合理をもたらすぬかるみ』 (早川書房、2023年)より。リストも本文からの引用です。
ナッジ (Wikipedia) の派生概念であるスラッジ (sludge) が指すものについて、本書の表を一部省略のうえ引用します。
摩擦 小 | 摩擦 大 | |
---|---|---|
良性 | (1) 行動を容易にする有用なナッジ | (2) 熟慮を促進するナッジまたはスラッジ |
悪性 | (3) 行動を容易にする有害なナッジ | (4) スラッジ |
スラッジという言葉が主に含意しているのは、(4) のカテゴリ。摩擦を増やすことで何かをしようとする人の妨げとなるもの(『例:膨大な書類作成、運転免許やビザ発行までの長い待ち時間』)です。
一方で摩擦を増やす、つまり行動までのハードルを上げることは、人に熟慮や再考を促す効果があります。それが (2) のカテゴリで、本エントリで引用しているリストは (2) の事例集と言ってよいと思います。
では (2) においてナッジとスラッジの違いは何か。著者は『軽率な行動を防ぐための仕掛けは、(有効な)ナッジともスラッジともとれる』と述べているので、あまり違いはないようです。
いっそ (4) のみをスラッジと呼んだ方がすっきりするように思いますが、ナッジ(そっとつつく)という言葉は
- タイトル: スラッジ: 不合理をもたらすぬかるみ
- 著者: キャス・R・サンスティーン(著)、Cass R. Sanstein(著)、土方 奈美(翻訳)
- 出版社: 早川書房
- 出版日: 2023-01-24