まえがき
『アロウは(略)個人が二つの条件を満たし、社会が四つの条件を満たす「完全民主主義」モデルには、論理的に矛盾が生じることを証明したわけです。』同時に成立しない四条件とは。
リスト
- 【個人選好の無制約性】 個人は与えられた選択肢に対して、いかなる選好順序ももつことができる
- 【市民の主権性】 全員がXよりもYを選べば、社会もYを選ばなければならない(パレート最適性、全員一致の原則とも)
- 【無関係対象からの独立性】 個人がXよりもYを好めば、たとえZを含めて考慮しても、やはりXよりもYを選ばなければならない
- 【非独裁性】 ある特定個人の選好順序が、他の個人の選好順序にかかわらず社会的決定となることはない
あとがき
まえがきの『』部分を含めて『理性の限界――不可能性・不確定性・不完全性』より。リスト項目は本文からの抜粋・引用です。
まえがきにある、個人が満たすべき2条件についても引用します。
- 【選好の連結律】いかなる選択肢に対しても、個人はそれを比較し選好順序をつけることができる
- 【選好の推移律】もし個人がXをYよりも好み(X>Y)、YをZよりも好む(Y>Z)ならば、XをZよりも好まなければならない(X>Z)
で、アロウが証明したのは、この2条件とリストの4条件を満足させるような「完全民主主義」モデルが成立しないことだそうです(2人以上の個人が3つ以上の有限個の選択肢に選好順序を持つ場合)。
ひとつひとつの条件を読んでいくと、民主主義の条件としては妥当だろうと思えます。これらが同時に成立しないことが「証明されている」というのは、なんだか直感に反する感じがします。しかしこの定理は『非常に難解とされていて、自力で証明できる経済学者も多くはない』とのこと。高い壁があるようです。
Wikipedia(日本語版)にも、ボリューム的には本書より詳しい解説があります。しかし本書の言葉づかいのほうが平易なので、本からの引用を選びました。
- タイトル: 理性の限界――不可能性・不確定性・不完全性 (講談社現代新書)
- 著者: 高橋 昌一郎(著)
- 出版社: 講談社
- 出版日: 2008-06-19