まえがき
『いうまでもなく大隈は、現代においても超一流で通用するタフ・ネゴシエーターだ。(略)常に次のような自戒の言葉を携えて交渉に臨んでいたという。』
リスト
- 愚説愚論を聞くのに堪える(たとえ自分が一を聞いて十を知っても、人の話は聞いてあげる)
- 自分より地位の低いものが自分と同じ意見なら、その人の意見として採用する(人を褒めて自分の徳を取る)
- 怒気怒声を発しない(自分の知識才能に及ばないことに対して怒ってもなんの利益もない)
- 事務上の決断は、部下の話が煮詰まってからすること(自分が先を読めても、立案した部下が理解しているとはかぎらない)
- 自分が嫌っている人にも勉めて交際を広める(好き嫌いをいってはいつ自分を危険に追い込むかわからない。つねに人と懇意になりよい関係を保つようにする)
あとがき
まえがきを含めて『交渉ハンドブック―理論・実践・教養』より。まえがきの「大隈」は、早稲田大学の創始者として知られる大隈重信です。『実は大隈は、近代日本の政治家の中で初めて西欧と対等に交渉をした人物なのである』ということで大隈重信と駐日英国公使パークスとの交渉の様子が描写されています。
本書によれば、このリストは『大隈の親友であった五代友厚が大隈に宛てた手紙に記されていたもの』とのこと。つまり作者は大隈ではなく五代友厚(Wikipedia)です。
内容は、交渉の心得というよりは上司の心得というほうが近いですね。駐日英国公使との交渉に第2、4、5項目が役立つとは思えません。ですので「交渉五戒」といったタイトルを避け、ただ五戒としておきました。
実際のところ五代はどのような文脈でこれらのアドバイスを贈ったのか、調べが及んでいません。