まえがき
天保の大飢饉の際、田原藩家老の渡辺崋山が、大坂商人との交渉に臨む真木十郎兵衛定前に書き送った8か条。いわば「交渉べからず集」。
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- 面後の情ニ常を忘スル勿レ(相手と向かい合って面談しているとき、その場の感情に流されて平常心を忘れないこと)
- 眼前の繰廻シに百年の計を忘スル勿レ(今現在のやり繰りにとらわれ長期的な展望を忘れないこと)
- 前面の功を期シテ後面の費を忘スル勿レ(目前の利益をとろうとして、後にツケが回ってくることを忘れないこと)
- 大功ハ緩にあり機会ハ急にありといふ事を忘スル勿レ(大きな成功は、緩やかに成し遂げるものである。だが、それを手にするためのチャンスは、突然にやってくるということを忘れないこと)
- 面ハ冷ナルを欲シ背ハ暖を欲スルト云ヲ忘スル勿レ(顔の表面上は冷めていることを要するが、心の内は暖かであることを要することを忘れないこと)
- 挙動を慎ミ其恒ヲ見ラルヽ勿レ(立ち居振舞いを慎みなさい、自分の本心を見透かされないこと)
- 人を欺かんとスル者ハ人ニ欺ムカル不欺ハ即不欺己といふ事を忘スル勿レ(他人を騙そうとするものは他人に騙される。欺かないということは、自分を欺かないことであるということを忘れないこと)
- 基立テ物従フ基ハ心の実といふ事ヲ忘スル勿レ(基本が立っていれば、あとはみなそれに従う。基本は誠実であるということを忘れないこと)
あとがき
『交渉ハンドブック―理論・実践・教養』より。第7項目の「欺かん」は、引用元では「欺ん」でしたが、「か」を追加しました。
- タイトル: 交渉ハンドブック―理論・実践・教養
- 著者: 忠, 藤田(監修)、日本交渉学会(編集)
- 出版社: 東洋経済新報社
- 出版日: 2003-08-01