まえがき
『つまり〈死とは、あらゆる生の可能性を喪失してしまうという可能性である〉とハイデガーは言うのです。(略)ハイデガーは、死について、さらに次のように指摘しています。』
リスト
- 自分の死はほかの人に代わってもらうことができない(代理不可能性)
- 自身の死と直面するとき、他の人びととのつながりがすべて断たれてしまう(没交渉性)
- 絶対に確実に訪れる(確実性)
- あらゆる瞬間に可能である(時機の無規定性)
あとがき
まえがきを含めて、西 研『NHK出版 学びのきほん しあわせの哲学』 (NHK出版、2021年)より。リストは本文からそのまま引用しています。本書の引用元はハイデガー『存在と時間II』 (中央公論新社、2003年)からの模様。
死とは、いつか確実に、いまこの瞬間にも訪れ得る、誰にも代わってもらえず、だれとも分かち合えない、生の可能性の喪失。端的で網羅的で相互排他的。いっそ詩的とも感じられる死の定義です。
NHK出版の「学びのきほん」シリーズは良書が多いように思います。その中にあって本書は内容の豊かさと読みやすさにおいてシリーズの中でもかなり上位にあるのでは。
参考文献
- タイトル: 存在と時間II
- 著者: ハイデガー(著)、原 佑(翻訳)、渡邊 二郎(翻訳)
- 出版社: 中央公論新社
- 出版日: 2003-05-10