まえがき
『小乗仏教のうちでも特に後期の説一切有部では、修行者がさとりを求める心を起こしたならば心理を思惟する前段階として、戒律を守り、身体を清浄にし、伝統的な教説を聞いた上で、「五停心観(ごじょうしんかん)」を修する。』
リスト
- 【不浄観】貪りを対治する
- 【慈悲観】いかり(瞋)を対治する
- 【因縁観】因果の理を観じて無知(癡)を対治する
- 【界差別観】われわれの個人存在を構成している十八要素(十八界)を観じて、我に対する執着を対治する
- 【数息観】出入の息を数えて心を統一し、心の散乱を対治する
あとがき
まえがきを含めて、中村 元『慈悲』(講談社、2010年)より。 参考文献として特定の文献は示されておらず、「こういう体系は後代のアビダルマで説かれたらしい」とありました。 このような形でリストになっていたわけではなく、本文を編集・引用してリストに仕立てました。
最初の3項目は三毒(貪・瞋・癡)ですが、それぞれに不浄・慈悲・因縁という心観が充てられています。ありのままの観察によって貪を、慈悲の心によって瞋を、因縁の理解によって癡を、それぞれ治せるということならば、これは三毒に対する「三薬」と言えそうです。
修行の順序としては、リストの並びとは逆に数息観(しゅそくかん/すそくかん)→ 界差別観 →三毒対治でしょうか。「対治」というのも見慣れない言葉です。辞書を引くと「退治」と同じらしい。
- タイトル: 慈悲 (講談社学術文庫)
- 著者: 中村 元(著)
- 出版社: 講談社
- 出版日: 2010-11-11