まえがき
『アメリカの大学で使われている批判的読書法のテキストには、批判的な読書の特徴について、いくつかのチェックポイントがあげられています。それをもとに、日本人向けにアレンジし直したのが(略)二〇のチェックポイントです。』
リスト
- 読んだことのすべてをそのまま信じたりはしない。
- 意味不明のところには疑問を感じる。意味が通じた場合でも疑問に感じるところを見つける。
- 何か抜けているとか、欠けているなと思ったところに出会ったら、繰り返し読み直す。
- 文章を解釈する場合には、文脈によく照らす。
- 本についての評価を下す前に、それがどんな種類の本なのかをよく考える。
- 著者が誰に向かって書いているのかを考える。
- 著者がどうしてそんなことを書こうと思ったのか、その目的が何かを考える。
- 著者がその目的を十分果たすことができたかどうかを知ろうとする。
- 書かれている内容自体に自分が影響されたのか、それとも著者の書くスタイル(文体)に強く影響を受けているのかを見分ける。
- 議論、論争の部分を分析する。
- 論争が含まれる場合、反対意見が著者によって完全に否定されているのかどうかを知る。
- 根拠が薄く支持されない意見や主張がないかを見極める。
- ありそうなこと(可能性)に基づいて論を進めているのか、必ず起きるという保証付きの論拠(必然)に基づいて論を進めているのかを区別する。
- 矛盾した情報や一貫していないところがないかを見分ける。
- 当てになりそうもない理屈に基づく議論は割り引いて受け取る。
- 意見や主張と事実との区別、主観的な記述と客観的な記述との区別をする。
- 使われているデータをそのまま簡単に信じないようにする。
- メタファー(たとえ)や、熟語や術語、口語表現、流行語・俗語などの利用のしかたに目を向け、理解につとめる。
- 使われていることばの言外の意味について目を配り、著者が本当にいっていることと、いってはいないが、ある印象を与えていることを区別する。
- 書いていることがらのうちに暗黙のうちに入り込んでいる前提が何かを知ろうとする。
あとがき
まえがきを含めて、苅谷 剛彦『知的複眼思考法 誰でも持っている創造力のスイッチ』 (講談社、2002年)より。
参考文献として 「Critical Reading Improvement, Anita E. Harnadek, MacGraw-Hill, Inc, 1969, pp.1-2 を参考に作成」とあります。せっかくなので原著を見てみようと思ったのですが、入手が難しい模様。
20はあまりに多いので要約を試みたいところですが、著者が既に4つにまとめてくれています。
- 眉に唾して本を読む: 読んだことのすべてをそのまま信じたりはしない (1-4)
- 著者のねらいをつかむ: 著者のねらいがわかれば理解も早いし批判のポイントも絞りやすい (5-9)
- 論理を追う: 論理に飛躍がないか、過度に攻撃的な主張がないか、論理を丹念に追う (10-18)
- 著者の前提を探る: 著者が直接書かずに与えている印象と、実際に書いていることがらを区別して読み取る (19-20)
- タイトル: 知的複眼思考法 誰でも持っている創造力のスイッチ
- 著者: 苅谷 剛彦(著)
- 出版社: 講談社
- 出版日: 2002-05-20
参考文献
- タイトル: Critical Reading Improvement
- 著者: Harnadek, Anita(著)
- 出版社: McGraw-Hill Inc.,US
- 出版日: 1977-12-01