誠実さが評判メカニズムとして機能する条件


まえがき

『(アダム・)スミスによれば、三つの条件が満たされれば誠実は評判メカニズムとして機能する。(略)これらの要素が適度に競争的な市場では見られるとスミスは考えている。』

リスト

  • 当人の過去の行動についての情報がすべての取引相手に入手可能である
  • 参加者たちは短期的利益にだけ関心があるのではなく長期的地平に立っている
  • 集合的な形で、誠実な行動には報酬が不誠実な行動には罰が、執行される

あとがき

まえがきを含めて、クリストフ・リュトゲ 『「競争」は社会の役に立つのか:競争の倫理入門』(慶應義塾大学出版会、2020年)より。まえがきの(アダム・)は引用者の追加です。リストは、まえがきの(略)部分の文章を編集して作成しました。

この部分はアダム・スミスの『道徳感情論』の分析研究(参考文献1)からの引用。

見方を変えると、こういった条件が満たされない市場環境では、誠実なふるまいが競争上有利に働くとは限らなくなります。するとどうなるか、もう一段落だけ引用。

 ここでの帰結は、個人に誠実であれと教える市場のやり方が弱体化させられる、ということである、とスミスは考える。もし誠実さが市場でもはや価値を与えられないなら、誠実な競争者が競争において不利になり、結果的にビジネスをやめるか支配的な戦略を採用するかの選択に直面することになる。

      参考文献

      (1) Wells, Thomas, and Johan Graafland. “Adam Smith’s bourgeois virtues in competition.” Business Ethics Quarterly 22.2 (2012): 319-350.

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      交渉 倫理 競争 誠実

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