まえがき
『私たちの社会的寛容は、「反応的攻撃性 (reactive aggression)」が比較的低いことに起因する。一方、命にかかわるような暴力は、「能動的攻撃性 (proactive aggression)」によってもたらされる。私たちの種が、低い「反応的攻撃性」と高い「能動的攻撃性」という異なる性質をどうして兼ね備えることになったのかについては、これまで語られることがなかった。』
リスト
- 反応的攻撃性:カッとなって暴力をふるう「激情」タイプの攻撃。恐怖や脅威に対する反応。敵意、憤怒、衝動的、感情的、興奮。
- 能動的攻撃性:計画し熟考する「冷静沈着」タイプの攻撃。外的・内的な報酬を目的とした意図的な攻撃。計画的、捕食的、手段的、冷静。
あとがき
まえがきを含めて、リチャード・ランガム 『善と悪のパラドックス ーヒトの進化と〈自己家畜化〉の歴史』(NTT出版、2020年)より。リストは本書の各所からの引用をまとめました。
家畜化というと聞こえが悪いですが、家畜化 (domestication) が進んでいるとは社会的動物としての進化が進んでいる状態を示す言葉です。
まえがきの『 私たちの種が、低い「反応的攻撃性」と高い「能動的攻撃性」という異なる性質をどうして兼ね備えることになったのか 』に対する答えとして、つまみ食い的に引用をつないだ本書の要約はこんな感じです:
人間は自己家畜化を通して「反応的攻撃性」を抑える遺伝的選択が生じ、寛容な協調性が高まった。一方で、協調性の高まりに伴う道徳的感受性の高まりや言語能力の発達に伴う意図の共有が「能動的攻撃性」を高めてきた。
- タイトル: 善と悪のパラドックス ーヒトの進化と〈自己家畜化〉の歴史
- 著者: リチャード・ランガム(著)、依田卓巳(翻訳)
- 出版社: NTT出版
- 出版日: 2020-10-16