まえがき
「五観の偈(ごかんのげ)は、主に禅宗において食事の前に唱えられる偈文。僧侶の食事作法のひとつだが、道徳的普遍性の高い文章であるため禅に限らず多くの分野で引用されている。」
リスト
- 一つには、功の多少を計[はか]り、彼[か]の来処[らいしょ]を量[はか]る。
これからいただく食事が、このお膳に乗せられるまでに、どれだけ大勢の人達の手を経てきたかということを考え、その人達の苦労に対し、心から感謝する。更に、これらの食物を育んでくれた日光・空気・土・水などの自然の恩恵にも感謝する。 - 二つには、己が徳行[とくぎょう]の全欠を忖[はか]って供[く]に応[おう]ず。
この食事をいただく自分は、どれだけ人のお役に立つようなことをしてきたか、果して本当に、この食事をお受けする資格があるだろうかと、よく反省してみる。 - 三つには、心を防ぎ過[とが]を離るることは、貪等[とんとう]を宗[しゅう]とす。
私達は食事に際し、ついより好みし、おいしいものはもっとほしいと貪り心を起こし、味のないものには愚痴を言ったり、腹を立てたりする。この貪瞋痴の三毒で、ついに地獄・餓鬼・畜生の三悪道に陥ってしまうものであることをよく反省する。 - 四つには、正に良薬を事とするは、形枯[ぎょうこ]を療[りょう]ぜんが為なり。
これからいただく食事は飢えや渇きをいやし、肉体が枯死しないための良薬として考えればよい。そうすれば貪りの心や愚痴・瞋りの心も起こる筈がない。 - 五つには、成道[じょうどう]の為の故に、今此の食[じき]を受く。
私達が食事をいただく最終の目的は成道せんがためである。即ち、まことの道を成し遂げるために食事をいただくのであって、決して食わんがためではないのである。
あとがき
リストは『あなたの少食が世界を救う―愛と慈悲の心で生きる少食健康法のすべて』、まえがきはWikipediaからの引用です。読みがなはこちらでふりました。また句読点や数字の表記などに少々修正を加えているので、引用元とまったく同じではありません。
『法句経からのメッセージ』という本のなかでこの言葉を見かけて気になったので調べました。原文自体にも解説文にも、多少ニュアンスの異なるバージョンがあるようですね。
「偈」は読み上げるための言葉という意味だと理解していますが、偈文だけでは何を唱えているのか分からないので、分かりやすく宗教色も薄い解説文を探しました。
このほか『典座教訓・赴粥飯法』という本の解説も紹介します。
一つに、目前に置かれた食事ができ上がってくるまでの手数のいかに多いかを考え、それぞれの材料がここまできた経路を考えてみよう。
二つに、この食事を受けることは、数多くの人々の供養を受けることにほかならないが、自分はその供養を受けるに足るだけの正しい行ないができているかどうかを反省して供養を受けよう。
三つに、常日ごろ、迷いの心が起きないように、また過ちを犯さないように心掛けるが、その際に貪りの心、怒りの心、道理をわきまえぬ心の三つを根本として考える。食事の場においても同様である。
四つに、こうして食事を頂くことは、とりもなおさず良薬を頂くことであり、それはこの身が痩せ衰えるのを防ぐためである。
五つに、今こうやって食事を頂くのには、仏道を成就するという大きな目標があるのである。
- タイトル: あなたの少食が世界を救う―愛と慈悲の心で生きる少食健康法のすべて
- 著者: 甲田 光雄(著)
- 出版社: 春秋社
- 出版日: 1999-12-01
- タイトル: 典座教訓・赴粥飯法 (講談社学術文庫)
- 著者: 道元(著)、中村 璋八(翻訳)、石川 力山(翻訳)、中村 信幸(翻訳)
- 出版社: 講談社
- 出版日: 1991-07-05
- タイトル: 法句経からのメッセージ―法句経は「英知の花篭」といわれながら多くの日本人はこの仏典の存在すら知らない
- 著者: 高瀬 広居(著)
- 出版社: グラフ社
- 出版日: 2002-10-01