まえがき
「フロネティック・リーダーは全体の善のために高質で倫理観にあふれる意思決定を下し、知識創造を通じてイノベーションを実現する。彼らには六つの能力が求められる。」
リスト
- 「善い」目的をつくる能力 ― 個別状況の中で「何が善いことか」についての判断(judgement)を下す能力
- 場をタイムリーに創発させる能力 ― 人間存在の根底にあるケア、愛、信頼、安心など感情の知(Social Capital: 社会関係資本)を共有する場をつくる能力
- アクチュアリティを直観する能力 ― 時々刻々と変化する、ありのままの個別具体の現実を凝視し、その背後にある本質を直感的に見抜く状況洞察能力
- 本質直観を生きたシンボルに変換する能力 ― ミクロの直観を、マクロの構想力(歴史的想像力、ビジョン、テーマ)と関係づけ、対話を通じて抽象化し、概念化し、仮説化し、物語化して、説得する能力
- 言語を結晶化する能力 ― 情熱と勇気を持って、あらゆる手段や資源を、時には巧妙に、マキアヴェリ的政治手法も理解して、ビジョンを実現する政治力
- 賢慮を育成する能力 ― 個人の全人格に埋め込まれている賢慮を、実践の中で伝承し、育成し、自律分散的賢慮(distributed phronesis)を体系化する能力
あとがき
まえがきを含めて『MBB:「思い」のマネジメント ―知識創造経営の実践フレームワーク』より。ダッシュ(―)の右側も基本的に本文からの引用です。第5項目は日本語として少々おかしなところがあります(「あらゆる手段や資源を」に対応する述語が見つからない)が、ママ引用しています。
修飾語に、まさに「思い」がこもっているなあという感じです。たとえば第3項目は「現実の背後にある本質を見抜く洞察力」としても大意は同じですが、リストのように書かれると著者がイメージしている「現実」が伝わってきます。
- タイトル: MBB:「思い」のマネジメント ―知識創造経営の実践フレームワーク
- 著者: 一條 和生(著)、徳岡 晃一郎(著)、野中 郁次郎(著)
- 出版社: 東洋経済新報社
- 出版日: 2010-06-18