村上春樹が翻訳を自作に引き入れた手法


まえがき

『日本の小説家村上春樹は、作品が広く翻訳されるとともに本人もアメリカ小説のベテラン翻訳者だが、(略)第二言語を使って新しい第一言語を生み出したのである。』

リスト

  • 最初に英語で書き始め、それを日本語に翻訳したことで、自分の日本語の文体を見出した。英語で書き始めたことで、日本文学の慣習的な言葉遣いや文構造を避けようとした。
  • 身の回りの道具、歴史的言及、さらに英語圏のポピュラーカルチャーから収集した語をふんだんに用いた。英語を想起させることで、現代日本の翻訳起点に思いを馳せ、そのテーマ性も言葉遣いもそれとわかる複数の読者群にアピールできる作品を生み出した。
  • 翻訳を内部に取り入れた。表意文字の漢字と表音文字のカタカナの違いを強調することによって、ページ上に複言語的な印象を創り出した。

あとがき

まえがきを含めて、レベッカ・L・ウォルコウィッツ『生まれつき翻訳: 世界文学時代の現代小説』 (松籟社、2022年)より。リストは本文を少し編集・引用して作成しました。

とてもよくわかる分析だと感じて収集しました。

翻訳小説好きなので、翻訳小説の短編集かなと思って手に取りました。しかし内容はとてもユニークな文学論です。

原題は “Born Translated: The Cotemporary Novel in an Age of World Literature”。邦題は正確な逐語訳なのですが、ややぴんと来ないところがります。敢えて意訳を試みるなら『翻訳ネイティブ: 文学が世界中で読まれる時代の小説論』かな。

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