まえがき
『Davis(1971)は、理論を面白くて影響力のあるものにする要素について「面白さの指標」という形で最も網羅的な議論を展開したが、それは、読者が持つ前提に対して挑戦し得る12の方法から構成されている。』
リスト
- 組織化: 一見無秩序(非構造的)な現象が、実は粗織化された(構造化された)現象である、あるいはその逆
- 構成物: 一見、相互に異質な現象の取り合わせのように見えるが、実は1つの要素で構成されている、あるいはその逆
- 抽象化: 個々の現象のように見えるものが、実は全体的な現象である、あるいはその逆
- 一般化: 一部に限定された現象に見えることが、実は一般的な現象であること、あるいはその逆
- 安定化: 安定的で不変だと思われる現象が、実は不安定で変化する現象であること、あるいはその逆
- 機能: ある目的を達成するための手段として、一見非効率的に見える現象が、実は効果的に機能していること、あるいはその逆
- 評価: 良くない現象と思われていたものが実は良い現象であること、あるいはその逆
- 相互関係: 一見無関係に(相互に独立したように)見える現象が、実は相関のある(相互に関連している)現象であること、あるいはその逆
- 共存: 一見一緒に存在するように見える現象が、実は一緒に存在し得ない現象であること、あるいはその逆
- 共変動: 複数の現象間に正の共変関係があるように見えるが、実際には負の共変関係があること、あるいはその逆
- 対立: 一見似ているように見える現象が、実は正反対の現象であること、あるいはその逆
- 因果関係: 因果関係において独立して存在する現象(独立変数)のように見えるものが、実際には何か他の要因に従属する現象(従属変数)であること、あるいはその逆
あとがき
まえがきを含めて、マッツ・アルヴェッソン、ヨルゲン・サンドバーグ『面白くて刺激的な論文のためのリサーチ・クエスチョンの作り方と育て方: 論文刊行ゲームを超えて』 (白桃書房、2023年)より。リストは付録2の表をリスト化したものです。付録2の表は参考文献[1]から作成されています。
1から7までが「単一の現象の特徴」、8以降が「複数の現象間の関係性」とカテゴリ分けされています。
まえがきにあるように、「面白さ」の根源にあるのは読み手の前提に対する挑戦のようです。つまり読み手はそれなりの前提を持って読むことが前提になっているわけです。
ここで思い出されたのは「ユーモアが生まれる3つの条件」。このリストによれば、ユーモアを生むのは「普通」や「予想」からの(無害な)逸脱。受け手の前提といってもいいでしょう。
相手の前提にどんな挑戦をするか。日常の仕事に何らかの「面白さ」を持ち込みたいときに参照したいリストです。
- タイトル: 面白くて刺激的な論文のためのリサーチ・クエスチョンの作り方と育て方: 論文刊行ゲームを超えて
- 著者: マッツ アルヴェッソン(著)、ヨルゲン サンドバーグ(著)、佐藤 郁哉(翻訳)
- 出版社: 白桃書房
- 出版日: 2023-07-18
この本からの他のリスト
参考文献
[1] Davis, Murray S. “That’s interesting! Towards a phenomenology of sociology and a sociology of phenomenology.” Philosophy of the social sciences 1.2 (1971): 309-344.