投稿者: koji

  • 面白くない研究の類型

    まえがき

    『(ギャップ・スポッティングとは)〈先行研究の中に従来見落とされてきた課題領域などをはじめとする各種のギャップ(隙間)を見出し、それらのギャップを踏まえて具体的なリサーチ・クエスチョンを作成する〉というやり方である。』

    リスト

    あとがき

    まえがきを含めて、マッツ・アルヴェッソン、ヨルゲン・サンドバーグ『面白くて刺激的な論文のためのリサーチ・クエスチョンの作り方と育て方: 論文刊行ゲームを超えて』 (白桃書房、2023年)より。リストは本文を要約・編集して作成しました。

    このリストは著者らがギャップ・スポッティングと名付けている、リサーチ・クエスチョンを構築する方法の類型です。著者らはギャップ・スポッティングによるリサーチ・クエスチョンの作成が社会科学系の論文においては主流の方法であると分析しています。

    著者らはギャップ・スポッティングがリサーチ・クエスチョン構築法の主流だと述べているだけで、タイトルのように「面白くない」とまでは言っていません。「独創的になりづらいリサーチ・クエスチョンの構築法であるギャップ・スポッティングの類型」というあたりがより適切なタイトルかと思います。しかし長すぎるので、少々誇張気味ではありますが「面白くない研究の類型」としました。

    ギャップ・スポッティングが不要だとか有害だとか述べているわけではありません、念のため。先行研究のギャップを探すという問いの立て方からは、面白く独創的な研究は生まれづらいと論じています。

    この本からの他のリスト

  • 創造性の4C

    まえがき

    『創造性に関する研究は、ほとんどの場合、2つの方向性を取る傾向がある。本論文ではこの2分法を拡張し、4つの創造性モデルを提案する。』

    リスト

    あとがき

    参考文献[1] より。まえがきは Abstract からの抜き書きです。リストは論文の要約です。

    どこかで、創造性の Big-C と Little-C という表現を見かけて興味を持ち検索したところ、この論文がヒットしました。

    研究者や著作者にとっては、自分の発見やメッセージがどのレベルのCかを意識するのは有用に思えます。Pro-C と意気込んでいるものが little-C ではないかと疑ってみるのは健全なレビューでしょうし、Big-C として認められるには相応の準備と覚悟が必要になるわけです。

    参考文献

    [1] Kaufman, James C., and Ronald A. Beghetto. “Beyond Big and Little: The Four C Model of Creativity.” Review of General Psychology 13.1 (2009): 1-12.

  • 国民の幸福度の判定基準

    まえがき

    『2012年以降、国連の持続可能な開発ソリューション・ネットワーク (SDSN) が毎年「世界幸福度報告書」を発表している(略)。ではここで、幸福度の判定基準となっている6つの要素を紹介しよう。』

    リスト

    あとがき

    まえがきを含めて、バーツラフ・シュミル『Numbers Don’t Lie: 世界のリアルは「数字」でつかめ!』 (NHK出版、2021年)より。

    幸福度を測るには基準が必要なわけですが、その基準から測定者の「幸福観」が見て取れます。

    著者はこの調査についてかなり辛口な評価をしています。分析は捨象して評価している部分だけ引用すると:

    これほど雑多な指標がごちゃ混ぜになっている状態だけを見ても、はたしてこれが正確なランキングになっているのかと疑わざるをえない。

    とにかく、幸福度ランキングという指標そのものが、じつにばかげているのだ。

    さらにつけくわえると、幸福度の高さと自殺率の低さに相関関係は見られない。

      参考文献

    • 労働生産性の3側面

      まえがき

      『労働生産性を高めるためには、以下のような順番で生産現場を改善していくことで、大きな成果を上げることができるのです。』

      リスト

      あとがき

      まえがきを含めて、日本能率協会コンサルティング(監修)『ものづくりの基本 現場改善・品質管理・安全衛生がよくわかる本』 (日本能率協会マネジメントセンター、2023年)より。

      初めて目にした3つ組だったのでいそいそと収集。この3側面に絞り込まれた経緯を知りたかったのですが、あまり関連する論文は検索できず。

      ユーティライゼーション面について、『ユーティライゼーション面の改善の狙いは、生産できない時間をなくすことにあります。』とありました。意味合いとしてはパフォーマンスに含まれるように思えて、いま一つピンとこなかったのですが、参考文献[1]にわかりやすい説明がありました。

      • Productivity = Sold Hours / Available Hours
      • Efficiency = Sold Hours / Clocked Hours
      • Utilisation = Clocked Hours / Available Hours

        参考文献

        [1] Productivity, Efficiency and Utilisation Explained and Defined (auto-shift.com)

      • 内発的モチベーションを高める3つの戦略

        まえがき

        『退屈な活動や難しい活動を、より内発的モチベーションのわく活動に変える方法は、3種類ある。』

        リスト

        あとがき

        まえがきを含めて、アイエレット・フィッシュバック『科学的に証明された 自分を動かす方法: なぜか目標を達成できてしまう、とてつもなく強力なモチベーションサイエンス』 (東洋経済新報社、2023年)より。リストは本文を要約・編集して作成しました。

        それぞれの違いがややわかりづらいので、本文では第三項目の解説部分で例示されている「ニンジンをたくさん食べる」という活動を他の項目にも敷衍してみます。

        • ニンジンを半分食べるごとにコミックを1話読むことにする
        • ニンジン半分を何秒で食べられるかというゲームにして食べる
        • ニンジンの長期的な効用(健康に良いなど)でなく、噛み応えがあり甘いという即時的な効用に意識を向けつつ食べる
        • 記憶のためにできること

          まえがき

          『覚えておきたい情報を頭の中に入れる一番いい方法は? さらにその後、必要に応じて一番簡単に、かつ確実に脳内の情報にアクセスするにはどうしたらいい? 苦労して学んだり覚えたりしたことをなるべく忘れないためには、どうすればいいのだろうか?』

          リスト

          あとがき

          まえがきを含めて、リサ・ジェノヴァ『Remember 記憶の科学:しっかり覚えて上手に忘れるための18章』 (白揚社、2023年)より。最終章の内容を大幅に刈り込んでリスト化しました。

          本には16項目めがあります。ただ意味合いとしては他の項目と重複していて、著者が茶目っ気を発揮して加えたと思われる項目なのでリストからは外しました。

          16 名前を覚えておきたいときは、ベイカーさんをパン屋さんにしよう。

          さあこれが何を意味するか、あなたは覚えていますか?

          これは本の中で説明されていた「ベイカーベイカーパラドクッス」を思い出させるためのクイズです。「9. 練習が完璧を作る」の実践というところでしょうか。自分の記憶力のテストのために、解説は書かないでおこうと思います。

          この本からの他のリスト

        • 記憶の形成段階

          まえがき

          『記憶の形成は、四つの基本的な段階を踏んで起こる。(略)意識的に思い出せる長期記憶を作り出すためには、四つの段階がすべて機能していなくてはならない。』

          リスト

          あとがき

          前書きを含めて、リサ・ジェノヴァ『Remember 記憶の科学:しっかり覚えて上手に忘れるための18章』 (白揚社、2023年)より。

          記銘・保持・想起の3段階をしばしば見かける気がしますが、これは4段階。(少なくとも邦訳には)参考文献はなし。

          この4段階はひとつながりの文章でも表現していました。

          情報を脳に入れる。次に、情報同士を糸のように織り合わせる。そうやってできあがった情報の布を、脳の持続的な変化という形で貯蔵する。最後に、望んだときはいつでも、情報の布を取り出せるようにしておくのである。

          この本からの他のリスト

        • 社会的選好の9タイプ

          まえがき

          『社会的選好は他者をも考慮する選好 (other-regarding preference) と呼ばれることもあります。(略)相手と自分とでいくらずつの利益を受け取るのか、その配分の選択から、あなたがどれくらい相手を考慮に入れて選択しているのかを判定します。』

          リスト

          あとがき

          まえがきを含めて、川越 敏司『「意思決定」の科学 なぜ、それを選ぶのか』 (講談社、2020年)より。

          自分は自分、人は人と思っていても、やっぱり気になってしまう。この類型を眺めていると、どれも自分のうちにあると思わされます。

          • 芸術作品の批評を理解するための質問の連鎖

            まえがき

            芸術作品についての批評を理解するために問いかけるべき質問とは。

            リスト

            あとがき

            ジェームズ・エルキンス『なぜ美術は教えることができないのか: 美術を学ぶ人のためのハンドブック』 (三元社、2023年)より。本文を編集・引用してリスト化しました。カッコの中は事例です。

            タイトルは質問の連鎖ですがリストは説明です。「この批評はどういう判断を下しているのか?」と読み替えていっていただければ。

            この質問の連鎖は、教師による作品の批評を学生がよく理解するためにこう考えてはどうか、といった文脈のなかで提案されています。

            『仮定と公理は実質的に同じだと言える。』という記述がありました。とすると、判断-理由-(仮定・公理)は、主張-小前提-大前提という演繹法と同じ組み立てであることが明らかになります。

            • アメリカ的な思考様式

              まえがき

              『このように、拡張によってアメリカは自身の内側の空虚という問題に対処してきたのである。その隠れた目的は、「他者」を「自己」に変換すること、そして喩えるならば鏡張りの広間の内部で生きることによって「安全」状態を確保することである。』

              リスト

              あとがき

              まえがきを含めて、モリス・バーマン『神経症的な美しさ:アウトサイダーがみた日本』 (慶應義塾大学出版会、2022年)より。リストは本文中の箇条書きから一部を刈り込んで引用しています。

              日本について書かれた本書の主題からは外れますが、非常に得心したので収集しておきたくなりました。すこし大げさな書かれ方のようにも感じられますが、人々の根底にこういった思考様式があるという観察は、短い期間ながら彼の地で暮らした実感と合っています。