投稿者: koji

  • ゼロの働き

    まえがき

    『ゼロは、個数を表すものではなく、物がないことを表しています。そこで、ゼロはむしろ、記号もしくは演算子のようなものとして考えることができます。(略)数学者にとって、ゼロには3つの働きがあります。』

    リスト

    あとがき

    まえがきを含めて、ルイ・グロース 『図形と数が表す宇宙の秩序』 (現代書林、2020年)より。まえがきもリストも本文を少し編集のうえ引用しています。

    このリストが文中にわりとポツンと置かれていました。これらの働きから何かの解釈が導かれていたわけではない(ように読めた)のですが、ゼロの特異さを説明していたのだと思います。

    • タイトル図形と数が表す宇宙の秩序
    • 著者: グロース,ルイ(著)、バラ十字会日本本部AMORC翻訳委員会(翻訳)
    • 出版社: 現代書林
    • 出版日: 2020-12-03
    • 人間の営みにまつわる体系的な予測不可能性の源

      まえがき

      『私は、人間の営みには〈体系的な予測不可能性〉 (systematic unpredictability) の四つの源があると論証したい。』

      リスト

      あとがき

      まえがきを含めて、アラスデア・マッキンタイア『美徳なき時代【新装版】』 (みすず書房、2021年)より。リストの見出し部分は「訳注」からの引用、解説部分は第4項目を除いて独自に作成しました。長い論証を圧縮したので不十分ではありますが、見出しだけでは思い出せなさそうなので。

      「(経営判断において)正解はない」といった表現をよく使います。しかしその不確実さの源をじっくり考えたことがなかったと、本書のこの部分を読んで痛感しました。

      • タイトル美徳なき時代【新装版】
      • 著者: アラスデア・マッキンタイア(著)、篠﨑榮(翻訳)
      • 出版社: みすず書房
      • 出版日: 2021-11-04

      この本からの他のリスト

    • スラッジが正当化できる場面

      まえがき

      『スラッジが重要な目的を果たしているケースも多い。ときには不可久なこともある。』

      リスト

      あとがき

      まえがきを含めて、キャス・R・サンスティーン『スラッジ: 不合理をもたらすぬかるみ』 (早川書房、2023年)より。リストも本文からの引用です。

      ナッジ (Wikipedia) の派生概念であるスラッジ (sludge) が指すものについて、本書の表を一部省略のうえ引用します。

      摩擦 小摩擦 大
      良性(1) 行動を容易にする有用なナッジ(2) 熟慮を促進するナッジまたはスラッジ
      悪性(3) 行動を容易にする有害なナッジ(4) スラッジ
      表: ナッジとスラッジの違い

      スラッジという言葉が主に含意しているのは、(4) のカテゴリ。摩擦を増やすことで何かをしようとする人の妨げとなるもの(『例:膨大な書類作成、運転免許やビザ発行までの長い待ち時間』)です。

      一方で摩擦を増やす、つまり行動までのハードルを上げることは、人に熟慮や再考を促す効果があります。それが (2) のカテゴリで、本エントリで引用しているリストは (2) の事例集と言ってよいと思います。

      では (2) においてナッジとスラッジの違いは何か。著者は『軽率な行動を防ぐための仕掛けは、(有効な)ナッジともスラッジともとれる』と述べているので、あまり違いはないようです。

      いっそ (4) のみをスラッジと呼んだ方がすっきりするように思いますが、ナッジ(そっとつつく)という言葉は

        参考文献

      • 集団極性化の2種類

        まえがき

        『集団極性化と呼ばれる現象がある。(略)集団極性化には、リスキー・シフト、コーシャス・シフトの2種類がある。』

        リスト

        あとがき

        まえがきを含めて、中野 信子『脳の闇』 (新潮社、2023年)より。リストは本文を編集してリスト化しました。

        まえがきの(略)部分は『1961年にストーナーという社会心理学者が論文として発表しているのだが、』です[1]

        検索用に英語を添えておくと、集団極性化: group polarization、リスキー・シフト: risky shift、コーシャス・シフト: cautious shift。

        • タイトル脳の闇
        • 著者: 中野 信子
        • 出版社: 新潮社
        • 出版日: 2023-02-01

          参考文献

          [1] Stoner, James Arthur Finch. A comparison of individual and group decisions involving risk. Diss. Massachusetts Institute of Technology, 1961.

        • 反射的反応の条件

          まえがき

          『「何も考えずに」おこなう反応のことを、心理学では「反射的反応」という。これは、刺徴から反射への結びつきが次の3つの条件を満たすものを指す。』

          リスト

          あとがき

          まえがきを含めて、レナード・ムロディナウ『「感情」は最強の武器である: 「情動的知能」という生存戦略』 (東洋経済新報社、2023年)より。

          もっとも有名なのは、『弛緩状態の膝の腱を叩くことで起こる「膝蓋腱(しつがいけん) 反射」』。もっと複雑な例としては、無視されるとカッとなるといった「押しボタン」(いわゆる「地雷」)も反射的反応の範疇に入るとのこと。

          著者は、ショウジョウバエが反射的反応では説明できない複雑なふるまいをすることからショウジョウバエにおける情動の存在を明らかにしたとする研究が紹介されています。ただし残念ながら参考文献は書かれていませんでした。

          アンダーソンらは一連の巧妙な実験によって、ショウジョウバエもさまざまな状況のもとで単に反射的に反応するのではなく、誘意性・持説性・一般適用性・強度適応性・自動性によって特徴づけられる情動状態に基づいて反応することを実証したのだ。

          この本からの他のリスト

        • 薩摩藩の人事評価制度

          まえがき

          『歴史を遡ると、薩摩藩が明治維新の頃に採用していたとされる人事評価制度があります。この制度のもとでは、以下の順に高く評価されていたそうです。』

          リスト

          あとがき

          まえがきを含めて、小林 りん『世界に通じる「実行力」の育てかた: はじめの一歩を踏み出そう』 (日経BP・日本経済新聞出版本部、2020年)より。リストは本文からの引用です。

          『歴史を遡ると』と前置きしつつ伝聞形……。ちょっと引っかかったので出典を探してみましたが、この書籍のような伝聞か引用元を示さない紹介ばかりで、一次情報が見当たりませんでした。”Quote Investigator” の日本版があれば調査を依頼したいところです。

          第4項目までは過去の行動(と結果)に対する評価なのに、第5項目だけ現在形になっているのも不思議です。「何もせずに批判した人」であれば、具体的な批判行動があったことがわかりますが、現在形で書かれると「あなたはいつも批判していますよね」といった、普遍的な特性を指摘しているように読めてしまいます。

          はたして薩摩藩に人事評価制度があったのか、あったとしてこのような制度だったのか。妥当な情報を見つけたら追記します。

            参考文献

            (一次情報が見つかったら追記予定)

          • 心理学の問題を解決困難にしている3つの様相

            まえがき

            『「ソフト(・サイエンス)という言葉は、軟弱なとか、いい加減な、という意味だろうと解釈されてしまいがちだが、実際には、社会科学は、方法論的にも知的にも、あらゆる学問の中でもっとも難しい学問領域のひとつなのである」』

            リスト

            あとがき

            まえがきを含めて、キャスリン・ペイジ・ハーデン『遺伝と平等:人生の成り行きは変えられる』 (新潮社、2023年)より。まえがきは『「ネイチャー」誌の、ある編集委員』の言葉として紹介されていました。(・サイエンス)をこちらで追加しています。

            またタイトルは本文の記述に準じて「心理学の問題を解決困難にしている3つの様相」としていますが、まえがきに引用した部分に示唆されているように、これらの様相は人間心理を扱うソフト・サイエンス(心理学、社会学、経済学、政治科学)全般に当てはまるものと思います。

            • 相互利益交渉のルール

              まえがき

              『勝利とは認知であり、相手が勝っているという認知を常に心がけることで、相手に譲歩しなくても勝ったと納得させることができます。』

              リスト

              あとがき

              まえがきを含めて、ロジャー・ドーソン『本物の交渉術 あなたのビジネスを動かす「パワー・ネゴシエーション」』 (KADOKAWA、2021年)より。リストは本文を要約して作成しました。

              リストの中でも特に強調していたのが2です。この章を締めくくる段落を引用します。

              交渉の際に最も重要な思考は、「何を相手から与えてもらえるか」ではない。「自分の立場を崩さず、しかし相手にとって価値のあるものを与えるにはどうしたらいいか」ということだ。相手が望むものを与えれば、相手もあなたが望むものを与えてくれる。

              この本からの他のリスト

            • 交渉の原動力

              まえがき

              『パワーネゴシエーターは、相手が何に駆られているのか、何を本当に達成したいのかを理解すればするほど、自分の立場を崩すことなく相手のニーズを満たせることを知っています。』

              リスト

              あとがき

              まえがきを含めて、ロジャー・ドーソン『本物の交渉術 あなたのビジネスを動かす「パワー・ネゴシエーション」』 (KADOKAWA、2021年)より。

              各項目の見出しは本文の見出しから引用しています。解説部分は2文からなっており、1文めは原動力の定義、2文めは交渉にあたって心得ておくべきことをまとめました。

              本書の理論的枠組みは、総じていえば、いわゆるハーバード流交渉術に準じるものです。ただこの原動力の分類は類書で目にしたことがなく、かつ納得性が高かったので収集しました。交渉を振り返るとき、たしかにこういった原動力が混ざり合っていると実感します。

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            • 交渉におけるパーソナルパワーの種類

              まえがき

              『結局のところ、パワー、コントロール、影響力。それが、あらゆる対人関係の核心ではないでしょうか。(略)私が言う「パワー」とは、(略)無慈悲なものではなく、単に人に影響を与える能力を意味しています。』

              リスト

              あとがき

              まえがきを含めて、ロジャー・ドーソン『本物の交渉術 あなたのビジネスを動かす「パワー・ネゴシエーション」』 (KADOKAWA、2021年)より。リストは本文を要約して作成しました。本文では8つのパーソナルパワーが挙げられており、補足として非常識パワーが添えられていました。

              著者は相互排他性よりは網羅性を重視したようで、一部重複や曖昧な定義があるようにも思います。本文では、これらの組み合わせがいかに強い影響力となって現れうるかなどが豊富な事例と共に解説されています。ふだん無意識に感じている影響力のやり取りが可視化される印象を受けました。

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